介護 接遇 取り組み

昨今の介護では接遇への取り組みに関する研修が盛んに行われています。
介護における接遇とは
みだしなみ
あいさつ
表情
言葉遣い
聴く姿勢
の5つが介護の「接遇5原則」とされています

ちょっと待ってください。
こんなこと「人として当たり前」なことばかりで小学生低学年でもすでに教えられていることじゃないですか?

でも、これが介護の現場では難しいのです。
だからこそ介護の現場では「接遇のグループワーク」も盛んに行われています。
でも、それって本当に介護の接遇の大切さが伝わっているのでしょうか?
もう少し本質的な所から「介護の接遇のグループワーク」で気づかなければならないことってあるように感じます。
その気づきがなければ、いくら介護の接遇のグループワークを重ねたところで行動や言動は変わりません。

介護も他の客商売と同じくサービス業です。
でも介護の現場では、「接客」ではなく「接遇」の意識が大切とされています。
それがどうしてなのか?まずはそこから気づかなけれなりません。

介護の接遇の取り組みで気づくべきこと①
接遇マナーがどうして必要なのか?

接遇のマナー

介護の現場で提供するサービスの性質だからこそ、この問題の難しさの本質に気づいてください。
他のサービス業であれば当たり前のことが介護の現場では当たり前ではないのです。
それは、利用者をお客様であってお客様として特別扱いしないことがあります。
このさじ加減が本当に難しいのです。
だから
高齢の利用者にタメ口や赤ちゃん言葉で話す若い介護スタッフ
挨拶もしない介護スタッフ
が出てくるのです。

例えば、高級レストランや一流ホテルに行けば特別扱いされることが当たり前と感じます。
それは、特別扱いされることで相手はとても気持ちが良く感じるからです。
でも、それが介護の現場では異なります。
介護の現場では
安心感
親しみやすさ
がより重要になります。
だからこそ
あえて特別扱いしない
こともあります。
そのために、
安心感を持ってもらえる接遇マナー
親しみを感じてもらえる接遇マナー
を身に付けなくてはいけないのです。
でも、この
安心感
親しみやすさ
をはき違えてしまうことも少なくないのです。

接遇マナーの距離感は「家族」じゃなく「ご近所さん」レベルがちょうといい


介護の接遇マナーにおいて難しいのが利用者さんとの距離感です。
これを多くの介護スタッフが誤解しています。
本人にいくら悪気はないとはいえ、これがついつい出ちゃうんです。

介護においては
・身体を密着させたり
・食事の介助をしたり
まるで家族のように利用者さんと接します。
そんなことを続けていると介護スタッフのほうもついつい家族みたいな感覚で接してしまいがちなのです。
でも、利用者さんは決して家族ではなくお客様なのです。

介護サービスの提供で
・身体を密着させること
・食事の介助をすること
は決して利用者さんが望んでいることではなく、やむおえず家族以外の人にやってもらうことなんです。
だからこそ、介護スタッフは利用者さんとの距離感(親近感)はつかず離れずの絶妙の距離を保つように心がけなければなりません。

介護の接遇の観点からすれば
親しき仲にも礼儀あり
例えるなら「ご近所さん程度」の距離感ではないでしょうか?

まだ信頼関係もないのにと相手との心の距離に土足でズケズケと入るようなことをしていませんか?

利用者さんとの信頼関係は一朝一夕には築けないことを理解していますか?
そのことが理解できていない介護スタッフがたくさんいます。
昨日入所してきた利用者さんに、
・いきなり慣れ慣れしくしたり
・他の利用者さんと同じスピードで介助したり
していませんか?

初めて会った介護スタッフに自分の身をすべて委ねることの不安や心配を理解してあげなければなりません。
またその介護サービスの内容や段取りもわからない?理解していない利用者さんならばなおさらです。

あなたにとっては他の利用者さんの中のひとりであっても、その入所したてや利用したての利用者さんにとっては初対面の見知らぬ人であり、どんなことをしてくれる?どんなことを頼める?かわからない人なのです。

信頼関係が築けていてこそ
ここはこうして欲しい
この時は痛いからこうやって
とか要望や改善点も利用者さんから言ってくれます。
信頼関係が築けていないうちほど注意深く利用者さんの表情や行動に気を配らなければなりません。
信頼関係が築けていないまま何も考えずに介護や介助をすると利用者さんから拒絶されて、その原因や理由もわからぬままで結局最後はあなたが一番困ることになるのです。

「一般常識のマナー」のうえに成り立つ「接遇マナー」

一般のマナーとは、社会一般で他の人に不快感を与えないものです。
これを踏まえた上での「接遇マナー」なんです。
よく「接遇マナー」を「おもてなし」に例えられるセミナー講師の方もいらっしゃいますが、まさにその通りだともいます。

接遇マナーとは
「介護する側の気持ちを言葉や態度で表現する」
ことといわれています。

だからこそ。接遇マナーは不快感を与えないという当たり前の一般的マナーのさらにそのワンランク上のマナーであり「おもてなし」なんです。

接遇マナーの難しさは、利用者さんひとりひとりに微妙に異なることなんです。、
相手が快適に思うことや感じることを相手に合わせて行うことだからです。
「ホッとする」
「落ち着ける」
「安心できる」
それが利用者Aさんと利用者Bさんでは必ずしも同じではなく微妙に異なるのです。

介護の接遇の取り組みで気づくべきこと②
知らず知らずのうちに利用者さんを見下していませんか?

「利用者さんを見下していませんか?
 上から目線になっていませんか?」

そんな質問をしたらみなさん即座に
「そんなことは絶対にありません!」
とそんな答えが返ってくるでしょう。
しかしそうでしょうか?
みなさん、
無意識のうちに
知らず知らずの間に
見下したような態度や言動をしていませんか?

どうして知らず知らずのうちに利用者さんを見下した上から目線になってしまうのでしょうか?

介護の現場では利用者さんをお客様だとは感じにくいから


居宅サービスであれば利用限度額は
要支援1:50,030円
要支援2:104,730円
要介護1:166,920円
要介護2:196,160円
要介護3:269,310円
要介護4:308,060円
要介護5:360,650円
です。

しかし、そのうち自己負担は基本的には1割負担です。
そこに利用者さんをお客様とは感じにくい本質的な問題があるかもしれません。
要介護2の方であれば毎月20万円ものお金をいただいているのです。
要介護3の方であれば毎月30万円ものお金をいただいているのです。
おおざっぱに例えるなら「要介護3の方なら毎日1万円ずつ頂いているようなもの」なのです。
毎日1万円ですよ!1万円!!!

しかし、介護の現場では直接のお金のやり取りは直接ありません。
だから、それが実感できないんです。

たとえば利用者さんが毎回
「はい、今日の分の1万円 これでよろしく」
と介護施設で支払っていればどうでしょうか?
きっとどの介護スタッフも利用者さんをお客様と認識することでしょう。
言葉使いや態度もガラリと変わるでしょうね。

この実際の介護の現場でお金のやりとりがないからこそ、
利用者さんにも介護スタッフにも勘違いが起こりやすいのかもしれません。

このお金のやりとりが実際に無いからこそ
利用者さんの実際に負担している金額も少ないからこそ
利用者さんにしても自分がお客さんという認識がなく
必要以上に卑屈になってしまうのです。
「今日もありがとうね」
「こんなことまでしてもらってすまないね」
という気持ちになりがちです。
利用者さんに自分たちが毎月30万円ものお金を支払っている認識はないのです。
そのせいでついつい介護スタッフのほうも謙虚さを忘れてしまいがちになります。

他のサービス業で考えてみましょう。
どの商売でも毎月30万円ものお金をその店に落としてくれるお客さんだったらどれほど丁寧に接することでしょう。
要介護度の重い方ほどたくさんお金をいただいているのです。
それが理解できれば、手のかかる利用者さんほど丁寧に接することが出来るのではないでしょうか。

多くの利用者さんは文句を言わない?言えない?ことに気づいていますか?

知らず知らずのうちに
利用者さんを見下してしまう
タメ口や赤ちゃん言葉になってしまう
のには理由があります。

それは「利用者さんはめったに文句は言わない?言えない?」からかもしれません。

それが知らず知らずのうちに横柄な介護スタッフの態度や言動に出てしまうのです。

もし、文句をよく言ってくる利用者さんには言葉使いも丁寧になりますし、態度にも気を配るでしょう。
でも、多くの利用者さんは先ほどお話ししたように、直接お金のやりとりもないですし、必要以上に卑屈になっている方も多いです。
少なからず認知症を持っている方も少なくありません。
だからこそ、文句は言わないし、言えないことも多いのです。

そんな状況だからこそ
・ついつい見下してしまうのです
・ついつい上から目線にになってしまうのです
このことは誰もが知らず知らず無意識のうちに陥るので常に気を付けていなくてはいけません。

介護の接遇の取り組みで気づくべきこと③
介護では笑顔が商品サービスであり付加価値ではない

介護の接遇のワークグループで「笑顔」のことがよく取りあげられます。
でも、この「笑顔」っていつもニコニコしていなさいというものではないと思うのです。
この「笑顔」って「不機嫌そうな顔じゃないこと」だと思うのです。
介護の現場は過酷な労働もありますし、複雑な人間関係のこともあります。
ついつい
疲れた表情
イタイラしている表情
が出てしまいがちなんです。
そんな表情をしている介護スタッフを見た利用者さんは
「自分が迷惑をかけているからかな?」
とか
「今ちょっとお願いしたことがあるんだけど・・・」
と遠慮してしまうのです。
また、イライラして不機嫌な表情で介護サービスを提供したのならきっと利用者さんにも感染していって利用者さん自身もイライラして不機嫌になるものです。
そもそも不機嫌そうなイライラし表情のままで優しい介護サービスはできません。
試しに怒った顔のままで優しい言葉を言ってみてください。
優しい顔をしたままで怒った言葉を言ってみてください。
そんなことは「笑いながら怒る」芸の竹中直人さん以外ではできませんよね。

いつもいつもニコニコしているなんて無理な話です。
ここでいう笑顔とは利用者さんが不快に思うような表情はしないようにする心がけるなんです。

笑顔や愛想は介護においては付加サービスではありません

例えばなにか商品を買って、お金を払った時に相手の店員さんが「ありがとうございました」と応える時の笑顔は付加サービスです。
なぜなら商品というメインの価値を提供しているから「笑顔」は付加サービスです。
仮に笑顔が無くても「その商品を手に入れる」っという目的は達せられます。

でも介護の現場では「笑顔」も商品のひとつであり商売道具であることを認識しておかなければなりません。
「笑顔」そのものがサービスの一部なんです。
なぜなら、介護の接遇は「おもてなし」だからです。
笑顔なしでの介護や介助のサービスができるか?といえばできません。
結果的に利用者さんを不安にしたり不快にしたり混乱させてしまうからです。
それでは介護や介助の目的が達せられません。

『私はもともと不愛想な顔なんで笑顔なんてできません』

「私はもともとこんな不愛想な顔なんです」
「そんな作り笑顔なんて私にはできません」

そんな開き直る介護スタッフの方もいます。

でも、それはただの言い訳でしかありません。
笑顔は介護の仕事に必要不可欠なんです。
サッカーの試合で
「ぼく シュートはしますけど相手のボールを追いかけるのはできません」
と言っているのと同じことです。
そのあたりは何とかしてもらわないといけないのです。

その笑顔が作り笑顔でもいいじゃないですか。
作れるならどんどん笑顔を作ってください。
人はそんなに四六時中作り笑顔なんてできません。
きっとすぐに本物の笑顔になります。

不愛想な顔のままでは不愛想な介護しかできません。
愛想のいい笑顔のままで不愛想な介護もできません。
怖い顔をしながら優しい介護はできません。
優しい顔をしながら怖い介護もできません。

介護の接遇の取り組みで気づくべきこと④
お客さんに敬語を使えと教えているのは介護の世界だけ

介護の世界でお客様とは利用者さんです。
そしてそのお客様である利用者さんに敬語で話しなさいを口を酸っぱくして境域うしているのも介護の世界だけなんです。

なにも必要以上にへりくだった敬語でなくいいのです。
ある程度の尊敬の念をもったニュアンスで十分なんです。
「お薬、お持ちしましたよ」
「気をつけてくださいね」
こんなレベルで十分なんです。
でも、それすらできない介護スタッフが多いのに幹部の方は頭を痛めているのです。

どうして敬語が使えないのか?


敬語といっても高校生が接客のアルバイトで使うレベルのもので十分です。
では、なぜそんな敬語すら使えないのか?

それはズバリ
「あんたにはタメ口でいいんだよ!」
という気持ちが心の底にあるからです。

これは誰もが持つ人間の本質なんです。
強い人
偉い人
怖い人
には人は誰でも自然に敬語を使います。
でも、
自分より弱い人
自分より偉くない人
には敬語はつかすぁないんです。
それってまさしく利用者さんじゃないでしょうか。

だからこそ知らず知らずのうちに敬語が使えなくなるんです。
言葉遣いは無意識のうちに相手によって使い分けてるものなんです。
駄菓子屋で子供相手に商売をしていれば、子供相手ですからそれなりの言葉使いになってしまうものです。
でも、利用者さんは子供ではありません。
まわりがみんな認知症の方ばっかりだったら、ついついタメ口になってしまいます。

介護の現場の接遇のグループワークでいくら「言葉遣いの講習」を開いてもそれがなかなか伝わらないのです。
みんな綺麗ごとばっかり言って、人間の本質のダークな部分を直視しないのです。
本質的に介護スタッフが利用者さんを「自分より下」「自分より弱い人間」と認識しているからなんです。
だからこそ、そのあたりを常日頃から律することが大切なんです。

どんな介護スタッフでも
・利用者を自分より下の人間
として感じてしまいやすい!
だからこそそのことにいつも気を付けて注意する
これが重要だと思います。

『自分の言葉遣いは少し悪くても利用者さんと信頼関係があるからいいんです!』

「自分の言葉使いは悪いと思われているかもしれませんが、利用者さんとの信頼関係が出来ているので大丈夫じゃないですか?そのほうが利用者さんも親近感を感じるんじゃないですか?」
そんなことをいう介護スタッフに優しい介護や介助サービスはできているとは思えません。
なぜなら、言葉遣いのひとつひとつにその方の利用者さんへの感じ方がにじみ出るからです。
そもそも信頼関係とは介護スタッフが判断できるものではなく、利用者さんだけが判断するものなんです。

そんなことをいう介護スタッフがいたらこうお願いしてください。
「では明日から私や施設長にも同じ口調で話してくれますか?」
きっとその方は黙ってしまうと思います。
本人がいくら利用者さんを見下している自覚はまったくないつもりでも、それが言葉遣いに出てくるのです。

油断すると利用者さんを知らず知らずのうちに見下している自分がいるかもしれない?
そのことを介護スタッフみんなの共通意識に浸透させなくてはこのタメ口問題の解決はできません。

介護の接遇のグループワークの場では「叱る」より「褒める」

いくら上司が介護スタッフの言葉遣いを個別に注意してもなかなかこの「タメ口問題」は解決しません。
また言葉遣いのことを叱責するのはその介護スタッフの人格すべてを否定するよなものですから、なかなか叱るのも勇気が要るものです。
また、いくら介護スタッフの言葉遣いを上司が注意しても、その言葉遣いに気を付けるのはその上司がいる時だけだからです。
きっと上司のいない夜勤の時には、その介護スタッフは利用者さんたちにタメ口で接していることでしょう。
ですから、言葉遣いのことを「叱るだけ」では不十分です。
※もちろん、正す時はきちんと正す。叱ることも大切です。
でも、叱ることと同時にキチンとした言葉遣いをした時には大いに褒めてあげることも大切です。
叱る側の上司にしても、下手に叱って辞められたりでもしたら大変ですから、叱るのは遠慮しがちになります。
でも逆に褒めることって抵抗が少ないじゃないですか。
だから、良い言葉遣いで利用者さんに接している時にはどんどん褒めてあげることも大切ではないでしょうか。

敬語が標準語になるまで続ける
まわりの介護スタッフがみんなキチンとした言葉遣いになって初めて「タメ口」問題は解決する

時間はかかりますが、介護スタッフのい大部分が利用者さんに敬語を使ってきちんとした言葉遣いになっていけば自然とタメ口問題は解決します。
言い換えれば、まわりの介護スタッフの言葉遣いがキチンと標準語になって初めて「タメ口」問題は解決すること威になります。

タメ口の悪影響の重要性を伝えよう

利用者さんからしたらその「タメ口」「赤ちゃん言葉」がどんな影響を与えるのか今一度考えてみましょう。

「タメ口」「赤ちゃん言葉」を使われた利用者さんは
・自分はもう価値の無い人間
と感じてしまわないでしょうか。
自分よりもはるかに年下の孫みたいな世代の介護スタッフから「タメ口」「赤ちゃん言葉」で話されていたら誰でも無意識のうちにそう感じ尾てしまいます。
人間は群れ社会で生きてきた本能がありますから、無意識のうちに自分のその世界での順位付けをしてしまうのです。

今のこの自分がおる環境で自分が一番下のランクである。
そのことが利用者の生きる活力を失わせているのです。

介護の接遇は介護の技術を教えるよりも何倍も大変

介護現場における接遇のマナーの意識を介護委スタッフみんなに浸透させるのはとても大変で根気のいることです。
しかし、これはずっと定期的に続けていかなければならない宿命でもあります。

なぜなら人間の心の本質的な部分はすぐにダークサイドに陥るものだからです。
介護における接遇マナーでは「性善説」よりも「性悪説」に基づいて考えなければいけないのではないでしょうか。

ですから、介護の接遇についてみんなに理解してもらうのは、介護の技術を教えるよりもはるかに大変なことなんです。